しゃべった言葉をその場でテキストに変換する、米国発の音声入力(ディクテーション)アプリ。macOS・Windows・iOS に対応し、メールでもチャットでもエディタでも、テキストカーソルが置ける場所ならどこでも使える。最大の特徴は自社開発の音声認識モデル「Avalon」で、OpenAI の Whisper をはじめとする既存モデルより高い精度をうたう。画面に映っている内容を手がかりに文脈を読むため、変数名やライブラリ名、社内の専門用語のように「音だけでは判別しづらい言葉」を正しく書き取れる点が評価されている。開発者向けには同じモデルを Avalon API として提供しており、既存の Whisper 連携から乗り換えやすい設計になっている。
主な特徴
- 独自モデル Avalon による高精度認識: AI・コーディング関連用語を集めたベンチマーク AISpeak-10 で 97.4% の精度を示し、比較対象の Whisper Large v3(65.1%)を大きく上回ると公表されている。汎用ベンチマークの OpenASR Leaderboard でも平均単語誤り率 6.24% を記録している
- 画面コンテキストの理解: 開いているアプリや画面上のテキストを参照して認識結果を補正する Deep Context 機能を備える。コードエディタで話せばコード寄りの表記に、メールなら文章寄りの表記に寄せられる。この機能は既定でオフで、ユーザーが明示的に有効化する
- カスタム辞書と文体の調整: 人名・ブランド名・社内用語などを辞書に登録して認識精度を上げられる。あわせて「かしこまった文体」「くだけた文体」といった書き方の指示も設定でき、話し言葉のまま口述しても整った文章として出力される
- 49言語対応と自動判別: 日本語を含む49言語に対応し、話している言語を自動で判別する。公式 FAQ によれば、日常利用者の半数以上は英語以外で口述している
- プライバシーモードと SOC 2 Type II: 既定では品質改善のために文字起こしが保持されるが、プライバシーモードを有効にすると保存されない。Business プランでは Zero Data Retention(データ非保持)も選べる。SOC 2 Type II の認証を取得済み
- Avalon API で開発者にも提供: 同じモデルを外部から呼び出せる。OpenAI SDK を使っている場合はベースURLとモデル名を差し替えるだけで移行でき、既存のリクエスト構造や認証をそのまま使える
料金
| プラン | 料金 | 主な内容 |
|---|---|---|
| Starter | $0 | 累計1,000語まで無料で試用可能。クレジットカード登録不要 |
| Pro | 年払いで月額$8 / 月払いで月額$10 | 文字数無制限、カスタム指示、拡張辞書。1アカウントで全デバイス利用可 |
| Max | 月額$24 | Pro の全機能に加え、リアルタイムモード、音声コマンド、新機能の先行利用 |
| Team | 1ユーザーあたり月額$12(2〜9名) | 一括請求、組織単位の設定、プライバシーモードの強制適用 |
| Business | 要問い合わせ(10名〜) | SSO / SAML、詳細レポート、Zero Data Retention |
| Avalon API | 音声1時間あたり$0.39 | 秒単位の従量課金(最低10秒)。座席課金なし |
学生向けにはPro・Maxとも70%割引が用意されている(Pro 月額$3 / Max 月額$9)。
料金は2026年8月時点の情報です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- 専門用語・固有名詞・コード関連の語彙に強く、技術系の口述で手直しが少なくて済む
- OS 標準の音声入力と違い、アプリを問わずシステム全体で同じ精度・同じ設定が使える
- 話し言葉のまま口述しても、文体設定によって読める文章に整えてくれる
- 無料枠が1,000語あり、カード登録なしで実力を確かめられる
- 同じモデルを API としても使えるため、個人利用から自作ツールへの展開がしやすい
⚠️ デメリット
- クラウド処理のためインターネット接続が必須で、オフラインでは利用できない
- 無料枠は累計1,000語と小さく、日常的に使うなら早い段階で有料プランが前提になる
- 音声データはクラウドに送られる。既定では文字起こしが品質改善に使われるため、機密性の高い内容ではプライバシーモードの設定が必要
- 精度ベンチマークは提供元自身が公表した数値であり、日本語での実測値は別途確認したほうがよい
- リアルタイムモードや音声コマンドは上位のMaxプラン限定
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Aqua Voice | Wispr Flow | superwhisper | OS標準の音声入力 |
|---|---|---|---|---|
| 認識モデル | 独自モデル Avalon | 独自の音声モデル | Whisper系モデルを選択 | OS 提供のモデル |
| 対応OS | macOS / Windows / iOS | macOS / Windows / iOS | macOS 中心 | 各OS標準 |
| オフライン利用 | 非対応(クラウド処理) | 非対応 | 対応(ローカルモデル選択時) | 対応する場合あり |
| 画面コンテキスト参照 | あり(Deep Context) | あり | 限定的 | なし |
| API 提供 | あり(Avalon API) | なし | なし | なし |
| 料金 | 無料枠あり+月額$8〜 | 無料枠あり+有料プラン | 無料枠あり+有料プラン | 無料 |
こんな人におすすめ
- 技術用語・製品名・コード断片を口述する機会が多いエンジニアやテクニカルライター
- 長文のメール・議事録・記事の下書きを、タイピングより速く片付けたい人
- 手や肩の負担を減らしたい、あるいはタイピングが苦手で入力がボトルネックになっている人
- 日本語と英語を行き来しながら口述する必要があり、言語切り替えの手間を省きたい人
- 自作アプリに高精度な文字起こしを組み込みたく、Whisper からの移行先を探している開発者
まとめ
Aqua Voice は、独自モデル Avalon と画面コンテキストの理解によって「専門用語に弱い」という音声入力の代表的な弱点に正面から取り組んだアプリである。無料枠が1,000語と小さいため本格利用には有料プランが前提になるが、月額$8 という価格帯を考えると、日常的に長文を書く人ほど元は取りやすい。クラウド処理が必須である点と、既定で文字起こしが保持される点は事前に確認しておきたい。まずは無料枠で日本語と自分の話し方における精度を確かめ、そのうえでPro相当の使い方に耐えるか判断するのがよい。