Vercelが開発・公開しているオープンソースのAI開発ツールキット。TypeScript/JavaScriptでAI機能を実装するとき、OpenAI・Anthropic・Googleなど20社以上のモデルを「同じ書き方」で呼び出せるようにするのが最大の役割である。チャットのストリーミング表示、ツール呼び出し(外部処理の実行)、構造化データの生成、そしてエージェントの構築までを一貫したAPIでカバーし、Next.js・React・Vue/Nuxt・Svelte・Node.jsなど主要なフレームワークで動く。2023年の公開以降バージョンを重ね、2026年時点の最新メジャーはAI SDK 7。承認フロー・実行の永続化・テレメトリなど「本番でエージェントを動かす」ための機能が加わっている。
主な特徴
- モデルを差し替えても同じコードで動く: プロバイダーごとに異なるAPIの違いをSDKが吸収する。OpenAIからAnthropicへ、あるいはローカルモデルへ乗り換えるときも、モデル指定を書き換えるだけで済むケースが多い
- AI SDK Core と AI SDK UI の2層構成: Coreはテキスト生成・構造化出力・ツール呼び出しといったサーバー側の処理を担当し、UIはチャット画面などフロント側のフックを提供する。ストリーミング表示を自前で実装する手間が省ける
- エージェントが第一級の機能: モデル・指示文・使えるツール・停止条件をまとめて「エージェント」として定義し、チャット画面でもバックグラウンド処理でもスクリプトでも同じ定義を使い回せる
- 構造化データ生成とツール呼び出し: 出力の形をスキーマで指定して型付きのオブジェクトとして受け取れる。外部API呼び出しやDB検索をツールとして登録し、モデルに実行させることもできる
- MCP対応と外部ハーネス連携: Model Context Protocol(MCP)に対応し、外部ツール群をエージェントに接続できる。Claude CodeやCodexといった既存のエージェントハーネスを共通のAPIで動かす仕組みも用意されている
- 本番運用向けの機能群: ツール実行前の承認、処理の永続化、タイムアウト、サンドボックス実行、テレメトリによる観測など、試作から本番へ持っていく段階で必要になる要素が揃っている
料金
| 対象 | 料金 | 補足 |
|---|---|---|
| AI SDK 本体 | 無料 | オープンソースとして公開。npmからaiパッケージとして導入する |
| モデル利用料 | 各プロバイダーの従量課金 | OpenAI・Anthropic・Googleなど、使うモデル提供元への支払いが別途発生する |
| Vercelへのデプロイ | 無料枠あり/有料プラン | SDK自体はVercel以外の環境でも動作する。ホスティング費用は選ぶ環境次第 |
料金は2026年8月時点の情報です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- モデル提供元のロックインを避けやすく、性能や価格の変化に合わせて乗り換えやすい
- ストリーミング表示やチャットUIの状態管理など、自前で書くと面倒な部分が用意されている
- TypeScriptの型が効くため、構造化出力やツール定義の間違いを実装中に見つけやすい
- ドキュメントとサンプルが充実しており、Next.jsとの組み合わせなら最短距離で動くものが作れる
- オープンソースで無料。小さく試して、そのまま本番まで持っていける
⚠️ デメリット
- メジャーバージョンの更新が速く、バージョン間で書き方が変わることがある。移行作業を見込んでおく必要がある
- TypeScript/JavaScript専用。Pythonが中心のチームには選択肢にならない
- プロバイダーごとの独自機能を使いたい場合、統一インターフェースからはみ出す部分の扱いを考える必要がある
- エージェント・承認・永続化まで踏み込むと、覚えることは相応に増える
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Vercel AI SDK | LangChain.js | Mastra | OpenAI Agents SDK |
|---|---|---|---|---|
| 提供元 | Vercel | LangChain | Mastra | OpenAI |
| 主な用途 | AIアプリ全般+エージェント | チェーン・エージェント構築 | TypeScript向けエージェント基盤 | エージェント構築 |
| 対応言語 | TypeScript/JavaScript | TypeScript(Python版は別実装) | TypeScript | Python/TypeScript |
| フロントUI連携 | 専用フックあり | 別途実装 | 別途実装 | 別途実装 |
| 料金 | 無料(オープンソース) | 無料(オープンソース) | 無料(オープンソース) | 無料(オープンソース) |
いずれもSDK自体は無料で、実際のコストはモデル提供元への支払いが中心になる。フロント側のチャットUIまで含めて一気に作りたいならVercel AI SDK、特定モデルの機能を深く使いたいならそのベンダー純正のSDK、という選び方が分かりやすい。
こんな人におすすめ
- Next.jsやReactでAIチャットや文章生成の機能を実装したいWeb開発者
- 複数のAIモデルを比較しながら使い、あとから乗り換える余地を残しておきたい人
- 構造化データの抽出やツール呼び出しを、型安全に書きたいTypeScriptユーザー
- 試作で終わらせず、承認フローや観測まで含めてエージェントを本番運用したいチーム
- 特定のAIベンダーに依存しない構成を、最初から前提にしたい人
まとめ
Vercel AI SDKは、TypeScriptでAI機能を作るときの「共通の土台」を提供するツールキットである。モデルを差し替えても同じコードが動く抽象化と、チャットUIまで面倒を見るフロント側のフックが揃っている点が強みで、AI SDK 7以降は本番でエージェントを動かすための機能も加わった。バージョンの更新が速い点だけ意識しておけば、TypeScript中心のプロジェクトでAI機能を実装する際の第一候補になりうる。まずは公式のGetting Startedに沿って、チャットを1本動かしてみるところから始めるとよい。