Vercel が提供する AI モデルの統合ゲートウェイ。OpenAI・Anthropic・Google など複数プロバイダーのモデルを、単一の API キーと単一のエンドポイントから呼び出せる。最大の特徴は、トークン料金にゲートウェイ側の上乗せ(マークアップ)もプラットフォーム手数料も乗らないこと。支払うのはプロバイダーの定価そのままで、自分のプロバイダーキーを持ち込む BYOK でも同様に無料で通せる。2025 年 8 月の一般提供開始以降、テキスト・画像・動画・音声・エンベディングとモダリティを広げ、Claude Code や Codex といったコーディングエージェントの利用料をゲートウェイ経由に集約する使い方にも対応した。
主な特徴
- 1 つのキーで数百のモデル: プロバイダーごとにアカウントとキーを用意する必要がなく、キー 1 本とエンドポイント 1 つで多数のモデルを横断して呼び出せる。モデル名の文字列を変えるだけでプロバイダーを切り替えられる
- 既存 SDK からの移行が容易: AI SDK v5 / v6 に加え、OpenAI Chat Completions・OpenAI Responses・Anthropic Messages の各 API と互換。既存コードはベース URL とキーを差し替えるだけで動く場合が多い
- 上乗せなしの課金と BYOK: トークンはプロバイダーの定価どおり。前払いのクレジットを購入して残高から差し引く方式で、残高が下限を割ったら自動チャージする設定もできる。BYOK もマークアップなしで利用できる
- 障害時の自動フェイルオーバー: あるプロバイダーへのリクエストが失敗したとき、別のプロバイダーへ自動でリトライする。BYOK で自分のキーが失敗した場合はシステム側の資格情報で再試行される(この分はクレジットから引かれる)
- オブザーバビリティと支出管理: リクエスト数・レイテンシ・プロバイダー別の支出をダッシュボードで確認できる。タグやユーザー ID を付けて集計する Custom Reporting、OpenTelemetry 形式で外部の監視ツールへ流す Trace Drains も用意されている
- 企業利用向けのセキュリティ設定: プロンプトを保持・学習しないプロバイダーへ限定するゼロデータ保持(ZDR)、利用可能なプロバイダーを絞るプロバイダー許可リスト、プロンプトの学習利用の拒否設定などをチーム単位で一元管理できる
料金
| プラン | 料金 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 無料枠 | $0 | 対象モデルが限定された無料クレジット。レート制限は有料枠より低く、超過時は 429 が返る |
| 従量課金 | クレジット購入(金額任意) | モデル定価どおりの従量課金。マークアップ・プラットフォーム手数料なし。BYOK 利用可、レート制限が上がる |
| Enterprise | 要問い合わせ | 請求書払い(決済手数料なし)、大口向けの割引 |
主なアドオン課金(既定はオフ):
| アドオン | 料金 |
|---|---|
| Custom Reporting(書き込み) | 1,000 件あたり $0.075 |
| Custom Reporting(クエリ) | 1,000 クエリあたり $5 |
| チーム全体のプロバイダー許可リスト | 成功リクエスト 1,000 件あたり $0.10 |
| チーム全体のゼロデータ保持 | リクエスト 1,000 件あたり $0.10 |
なお、リクエスト単位でのプロバイダー絞り込み(only パラメータ)とリクエスト単位の ZDR 指定は追加費用なしで使える。従量課金では決済手数料が利用者負担になる点も押さえておきたい。
料金は2026年8月時点の情報です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- トークン料金に上乗せがないため、複数プロバイダーを束ねる中間層を入れてもコストが増えない
- プロバイダーごとのキー管理・請求管理から解放され、支出をひとつのダッシュボードで把握できる
- 既存の OpenAI / Anthropic SDK 資産をほぼそのまま活かせるので、乗り換えコストが小さい
- 障害時の自動フェイルオーバーにより、単一プロバイダー依存のリスクを下げられる
- ZDR やプロバイダー許可リストなど、業務利用で問われる要件をコードでなく設定で満たせる
⚠️ デメリット
- 無料枠は利用できるモデルが限定され、レート制限も低いため、本格利用には前払いクレジットの購入が前提になる
- 前払い残高方式のため、残高切れによる停止を避けるには自動チャージの設定や監視が必要
- 高度な機能(Custom Reporting、チーム全体の ZDR・許可リスト、Trace Drains)は別料金で、リクエスト数に比例して積み上がる
- ゲートウェイを 1 段挟む構成のため、そこ自体が単一障害点になりうる
- 最新モデルの提供タイミングや細かなパラメータ対応は、プロバイダーへ直接つなぐ場合と差が出ることがある
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Vercel AI Gateway | OpenRouter | Cloudflare AI Gateway | プロバイダーへ直接接続 |
|---|---|---|---|---|
| 提供元 | Vercel | OpenRouter | Cloudflare | 各社 |
| 課金方式 | クレジット前払い、トークンはマークアップなし | クレジット前払い、推論はマークアップなし(クレジット購入時に 5.5% の決済手数料) | 自分のプロバイダー契約を経由(ゲートウェイ自体はプロキシ) | 各プロバイダーへ個別に支払い |
| キー管理 | 1 キーで横断、BYOK 可 | 1 キーで横断、BYOK 可 | 自分のプロバイダーキーを使用 | プロバイダーごとに管理 |
| フェイルオーバー | あり | あり | 設定でフォールバック可 | 自前実装が必要 |
| 強み | 既存 SDK 互換、支出・セキュリティ設定の一元管理 | 対応モデル数とコミュニティの厚み | キャッシュ・レート制限などエッジ側の制御 | 最新機能への追随が最速 |
こんな人におすすめ
- 複数の AI プロバイダーを併用していて、キーと請求の管理が煩雑になっているチーム
- モデルを頻繁に比較・切り替えながら開発したい開発者
- 特定プロバイダーの障害でサービス全体が止まるリスクを下げたい運用担当者
- ZDR やプロバイダー制限など、コンプライアンス要件を設定で担保したい企業
- Claude Code や Codex などコーディングエージェントの利用料を 1 か所に集約し、上限を設けて管理したい人
- すでに Vercel でアプリを運用していて、AI 部分も同じダッシュボードで見たい人
まとめ
Vercel AI Gateway は、「複数プロバイダーを束ねる中間層を入れるとコストが増える」という従来のトレードオフを、マークアップなしの課金設計で回避したサービスである。既存の OpenAI / Anthropic SDK からの移行が容易で、フェイルオーバー・支出管理・ZDR といった運用面の要件をまとめて引き受けてくれる。無料枠は対象モデルが限られるため、まず小額のクレジットを購入して実際のワークロードで手数料と挙動を確かめ、そのうえで本番のトラフィックを移していくのが現実的だ。