Affinityは、英国Serif社が育ててきたプロ向けデザインツールが、Canvaによる買収を経て2025年10月30日に統合アプリとして生まれ変わったものである。従来は別売りだったAffinity Designer(ベクター)、Affinity Photo(写真編集)、Affinity Publisher(ページレイアウト)の3製品が1つのアプリにまとめられ、ベクター・ピクセル・レイアウトの3つのワークスペースをタブで切り替えながら制作できるようになった。最大の変化は価格で、全機能が個人利用で永久無料になっている。Photoshop / Illustrator / InDesignの代替として通用する機能を持ちながら、サブスクリプション費用が一切かからない点が最も大きな特徴だ。
主な特徴
- 3つのワークスペースを1アプリで切り替え: ベクター(曲線編集、シェイプビルダー、グラデーション、画像トレース)、ピクセル(レタッチ、合成、非破壊RAW現像、スタック・バッチ・マクロ)、レイアウト(マスターページ、オートフロー、段組みガイド、高度なタイポグラフィ、印刷入稿対応、データ結合)を、アプリを行き来せずに使える
- 全機能が永久無料: Canvaアカウント(無料でよい)でログインすれば全ツールが制限なく使える。買い切り課金もサブスクリプションもなく、機能追加を含むアップデートも無料で提供される
- 他社ファイル形式のインポート: PSD、AI、IDML、DWGの読み込みに対応し、レイヤー構造を保ったまま取り込める。Adobe製品からの移行や、他者から受け取ったデータの編集がしやすい
- 非破壊編集とカスタマイズ可能なUI: 元のレイヤーを保持したまま調整でき、パネル配置を自由に組み替えて用途別のワークスペースを複数保存・共有できる
- Canva AIによる生成機能(オプション): 生成塗りつぶし、背景除去、画像・ベクター生成といったAI機能をアプリ内から利用できる。ただしこれらはCanvaの有料プラン契約が前提となる
- ローカルファイルはAI学習に使われない: 公式サイトで、ユーザーのローカルファイルがAIの学習に使用されないことが明記されている
料金
| プラン | 料金 | 主な内容 |
|---|---|---|
| Affinity 本体 | ¥0(永久無料) | ベクター・ピクセル・レイアウトの全ツール、無料アップデート。Canvaアカウントでのログインが必要 |
| Canva AI機能(オプション) | Canvaの有料プラン料金に準じる | 生成塗りつぶし、背景除去、画像・ベクター生成などのAIツール。Pro / Business / Enterprise / 教育版のいずれかの契約が必要 |
料金は2026年8月時点の情報です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- プロ用途に耐える機能一式が無料で、月額費用の心配なく本格的な制作ができる
- ベクター・写真・レイアウトの往復が1アプリ内で完結し、アプリ間のファイル書き出しが不要になる
- PSD / AI / IDMLを読み込めるため、Adobe中心の環境からでも移行しやすい
- 買い切り版Affinity V2のユーザーも引き続きV2を利用でき、いきなり作業環境を失う心配がない
- Apple SiliconネイティブでMacでの動作が軽い
⚠️ デメリット
- 利用にCanvaアカウントの作成とログインが必要で、完全にオフライン単独のツールではない
- AI機能を使うにはCanvaの有料プラン契約が別途必要になる
- 2026年8月時点でiPad版は「近日提供」の段階で、モバイル制作には対応していない
- 3製品が統合されたことでUIが刷新されており、旧Affinity V2に慣れたユーザーには操作の学び直しが発生する
- Adobe製品と完全な相互互換ではなく、複雑なファイルではインポート時に再現しきれない要素が出うる
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Affinity | Adobe Creative Cloud | Canva | Figma |
|---|---|---|---|---|
| 提供元 | Canva | Adobe | Canva | Figma |
| 主な用途 | ベクター・写真編集・印刷レイアウト | 同左(アプリ別) | テンプレート中心のグラフィック制作 | UI/UXデザイン・共同編集 |
| 料金 | 個人利用は無料 | サブスクリプション | 無料プランあり/Proは有料 | 無料プランあり/有料プラン |
| 動作環境 | Windows / Macのデスクトップアプリ | デスクトップ中心 | ブラウザ中心 | ブラウザ中心 |
| 印刷入稿 | 対応(CMYK・プレス対応) | 対応(InDesign) | 限定的 | 非対応寄り |
| AI機能 | Canva AI(有料プランで利用) | Firefly | Magic Studio | AI機能あり |
こんな人におすすめ
- Adobe Creative Cloudの月額費用を見直したいフリーランスや個人事業主
- ロゴ・写真加工・紙面レイアウトを1人で担当していて、アプリの行き来を減らしたい制作者
- 印刷入稿まで想定した本格的なDTP作業を、費用をかけずに始めたい人
- Canvaのテンプレート制作では物足りず、細部まで詰めた制作をしたいCanvaユーザー
- デザインを学び始めたばかりで、高額な初期投資を避けたい学生・独学者
まとめ
Affinityは、有料のプロ向けデザインソフト3本ぶんの機能を1つのアプリに統合し、個人利用を永久無料にした点で、デザインツールの選択肢を大きく変えた存在である。ベクター・写真・レイアウトを1アプリで完結でき、PSDやAIファイルの読み込みにも対応するため、Adobe中心の環境からの移行先としても現実的だ。一方でAI機能はCanvaの有料プラン前提であり、iPad版も準備段階にある。まずは無料で導入して手持ちのファイルが問題なく開けるかを確かめ、そのうえで本格運用に切り替えるのがよい。